事象 (何が何して何とやら?)

半導体アンプの異端児 QUAD 50Eが突きつけた課題


半導体アンプの完成形 オペアンプ



 半導体で構成されたアンプを考えた場合、オペアンプは一つの完成形と言えるでしょう。

 演算用アナログアンプであり、応用例としてオーデイオ用途にも使用可能、

初心者のアマチュアが設計するアンプより、あらゆる面で優れている、

基本構成は差動増幅二段+シングルエンドで、どうしてもこの形に行き着く、

ここで、音が良いの悪いの、等の理屈は言わない事とする。



 メーカーでアッセンブリされた集積回路であるから、目的に応じた仕様は完璧と言える。

 このオペアンプ(集積回路)を巧みにオーディオに応用させた製品としたのが、ジェフ・ローランドであります。



 一連のジェフ・ローランドブランドのアンプは高額かつ高級アンプとして、結構名声を博しております。

 造りそのものは、如何にして湯水の如く無駄使いをするか?、価値観が大きく分かれる程の・・・、  これもアリなのかも知れません。

 その音質は破綻の無いグレードではあります、しかし個人的には手放しでは喜べないのです、主観的な意見を述べれば、
「悪くはないが魅力もない」  ジェフ・ローランドのファンから見れば殺されそうです。(暫しご容赦)

 その音質は、艶やかではあるが、ラップで覆った様な質感が感じられる、オペアンプで特に感じる人工美?
上っ滑りする様な彫りの甘さ、要するに、ハッキリ聴こえ難いのです。

 マランツ#7やマークレビンソンLNP−2とはベクトル的には対極の位置にある、と言えば理解して頂けるだろうか?




BBC モニター





 QUAD社のESL63、英国BBCモニターに採用されたコンデンサースピーカーです、
同心円状に配置されら振動系は、このモデル独特の構造を有し
その音質は真にクリアーであり、まさにモニタースピーカーに相応しい性能であります。

 1980年台後半になると、世界のオーディオ機器の試聴に恵まれる環境となりました、
この頃になると再生音は過度特性重視し、キャラクターの強い部類の物は苦手であり、
そんな中、ESL63は幾度と試聴、大変好ましいスピーカーとの印象でありました。

 このESL63を駆動するアンプには、BBCでは同QUAD社の50Eが指定されており、
アンプに関しては405の様な民生機用は早くから輸入されておりましたが、BBC仕様の
50Eを試聴したのはESL63よりも随分後の事でありました。 



 BBC仕様の50Eは一般オーディオ店で在庫しているもは稀であり、現物にはまずお目にかかりませんでした、
そんな中、たまたま50Eの試聴に恵まれる機会が訪れました、ただ大きな期待はしておりませんでした、
50Eの外見も仕様も取り立てて特別なものでは無かったからです。

  さて、QUAD-50Eを始めて聴いた印象は・・・、「まさか!  なんと・・・?」


 それは、それまでの半導体アンプの音質と全く異なる性格だったのです、
音質が?、、、とか以前の異質感覚なのです、まず、帯域の狭さ、ナローレンジです。、

 歪感とか論外の、粗野でアコースティクな音の塊です、
しいて表現するならば、「電気の音がしない」、電気増幅を行わない蓄音機の音、です。

 理屈はさて置き、この音、音の良い悪いは別にして、ドキッとする程ハッキリした音で咆えます。



QUAD 50E 回路図




(50E 回路図を見る) 何だ! 今時この回路は?

 回路図を見て驚きました、正に絶句であります。

 ■コンプリメンタリが無い、 ■差動増幅が無い、 ■カレントミラーがない、 ■・・・がない、
 信号系には、入力トランス、出力トランス、段間カップリングのコンデンサはツタツタに切断、
 電源の規模は、これ以上簡素にしようがない程の規模、(単一電源、極小リップル排除)、
 およそ、模範的な半導体アンプの回路ではございません、
 では、ハッキリ聴こえる原因は・・・・?





 大昔の古典真空管アンプを、そのまま半導体に置き換えたが如。

 この50Eが、英国BBCモニターアンプであります。


 この50E、熱烈なオーデイオマニアには余り人気がなく、
ニーズは年配の音楽愛好家が求めて行かれるそうです。


およそ察しは着いて・・・・・・?
物理的な事柄の結果は必ずしも反映されない場合がある、聴覚、何がが敏感か? 鈍感か? またマスキング? 理屈通り行かぬものです。
数値のみで良いならば、あえて真空管の必要性は皆無でしょう、更に回路形態にも未知の・・・・?

 ある老技術者がポツリと言った一言が忘れられない、「これは半導体のウィリアムソンだ、英国気質「かな?」と、・・・・・

2016/12/02



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