真空管の特徴



   類のない動作の純粋性


 真空管式アンプは1950〜1960年代に最盛期を迎え、以後電子素子としての主役は半導体に移りました、半導体は真空管に無いコンプリメンタリ(動作が同じで極性が逆)が存在するため、回路構成は真空管(極性が同一の物しか存在しない)とは比較にならない程自由度があります、通常であるならとうの昔に消滅していてもおかしくは無いのですが、音楽関係には依然として真空管の地位は揺らぎない様です、オーディオ関係はもとより楽器系のギターアンプ等では半導体と一線を隔す純然たる地位を保っております。

 真空管の動作自身は半導体と比較しますと驚く程純粋であります。

 まず、動作をコントロールするグリッドにはエネルギーを必要といたしません、単に電位の変化のみで電流を流す必要がないのです、この電位変動だけで大きなエネルギーを持ったプレート電流を制御できます。

 エネルギーの必要が無いという事は非常に意味深い事なのです、例を挙げますと極限状態の物理測定を考えて下さい、物理現象にある程度エネルギーを持っている場合は問題ありませんが、電子とか素粒子の様に彼測定側のエネルギーが極少の場合、その情報伝達は困難を極めます、エネルギーを介さないで情報の伝達が出来る真空管は極限状態の物理測定と一脈通じるものがあります。


 また、グリッドに電位がかかっていなければカソードよりは最大の電子が放出され、プレート電流も最大となります、グリッドの電位とはあたかも原子炉の制御棒と一脈通じるものがあり、絶えず暴走する方向にあります。

 自動車の発進に例えるなら、真空管は絶えずエンジンは全開で回転しており、クラッチをコントロールする事によって発進いたします、それに対して半導体はアクセルを踏み込んで発進するのと似ております。

 動作の純粋性という観点から見ると真空管は素晴らしいものがあります、この純粋性が音質に貢献しているかは物理的に証明は出来ませんが、
いいかげんに作った真空管アンプであっても結構良い音がするのは、あながち無関係ではない様に思われます。